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2010年 08月 06日
未だに夏休み体制で、ぎりぎりの人数での業務です。
今週は18床プラス2床を、一人で面倒をみなければなりませんでした。 しかも、重症や、家族の要求が多い手のかかる患者さんばかり。 重症の患者さんの中には、病歴の長い癌の患者さんも多く、私は初めて診る患者さんについては、何年分ものカルテを全て見直すようにしています。 毎朝の回診では十分話が出来ない場合には、その後に更に病室を訪問します。 そんな中に、おそらく確実にターミナルに向かっている患者さんがいました。 膀胱全摘後の経過の中で、腎瘻造設もされています。腎瘻やストーマからの血尿が止まらずに入院。主治医は感染症だろうと考えていました。患者さんには尿管ステントも挿入されており、交換されるべきものがされていませんでした。日本でもごく数えるほど、そんな例をみたことがありますが、感染のため石ができたりして問題になります。1ヶ月ほど前に、ストーマからステントを抜去するために内視鏡検査をされたようですが、ステントが見つからなかったとのこと。検査をしたのが私より上級医だったため、私は腎瘻から抜くことを考えたのですが、他の上級医が私にもう一度内視鏡で試みるよう言ってきました。 患者さんとは、2時間ほど、図を描いたりしながら説明したり、話をしたりしました。 そのときに、「ヒロシマの原爆の日」の話もしました。祖父が広島で被爆した話をすると、よほど身近に感じたことが驚きだったようです。「こんなふうに、医者に話をしてもらったことはなかった。あなたに会えて良かった。」と、涙ぐんでくれました。 患者さんを外来へ連れて行き、軟性膀胱鏡で回腸導管の中を進みます。回腸導管が何故か非常に長くて、ステントが見つからないかと思われたとき、目の前にステントが現れました。介助の看護師さんに支持を出しながら、鉗子でステントを把持し抜去に成功。そこからが悪夢の始まりでした。ステントとともにストーマから水道の蛇口全開の勢いで大出血が始まりました。外科医ですから出血には慣れていますが、それは血管からの出血の場合。予期せぬ場所からの予期せぬ大出血には、多少は動揺してしまいますが、そこは落ち着いて対応しなければなりません。以前、同じように出血した症例の話を聞いたことがありました。大きな血管と尿路の瘻孔を疑いました。まず、腎瘻を閉じ、点滴や酸素ガスなどの指示を出し、自分はストーマからの出血を両手で押さえるため、身動きが取れないため、病院内の緊急アラームの番号を鳴らします。基本的に4分以内で緊急事態に対応する医師と看護師チームが駆けつけることになっています。 患者さんには常に意識があるかどうか会話をしながら、次のプランを立てます。 まずは、「緊急血管造影」。 そうこうしているうちに、緊急対応医師チームが到着。出血が案外コントロールできているのか、血圧はやや低下、血液データもまずまずです。麻酔科がベッドを押して血管造影室へ。私はストーマから手が離せません。 結局、出血はおさまったのは良いのですが、そのため出血源が判明せず。CTアンギオまでやりましたが、、。再度出血の可能性もあるためICUへ入室要請をしましたが、担癌患者さんの入室は難しいのです。その辺が日本とは違うところ。予算、医師および看護師数、ベッド数などに限りがあることから、治療の優先順位があるのは厳しいですが、仕方がありません。 最先端の医学をもっても、今なお進行癌の患者さんを治すことは難しい。良かれと思った処置が裏目に出ることもある。無力な自分。そんな状況が非常に苦しく感じます。 大出血の中、少し意識が薄れながらも、 「今日はヒロシマの日だね。人間は歴史を忘れてはいけないんだ。歴史から学ばなければいけないから。ヒロシマの日に自分のために食事も抜きで、こんな面倒を掛けて申し訳ない。」 と、患者さんが私に言ってくれました。 その言葉を、私はずっと忘れない。 できれば、ほんの少しでも家に帰れるようにしてあげたい。 この国では、勤務時間が過ぎれば医師は義務から解放されるけれど、医師として私が患者さんに接する時間が、少しでも患者さんの助けになるのだとしたら、日本人医師としての精神を持ち続けてゆきたいと思っています。
by drpion
| 2010-08-06 19:45
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